現代の製薬規制の礎となる「GMP(Good Manufacturing Practice)」は、18世紀末の天然痘ワクチンの登場から
はじまりは、エドワード・ジェンナーが牛痘を用いて天然痘を予防できると示した1796年。
この驚くべき発見は「ワクチン」という概念を世に生み出しました。
天然痘ワクチンは、当時の死の恐怖を克服する唯一の「希望」となり、多くの人々が接種を望みました。
ところが、それに目をつけたのは、治療者だけではありませんでした。
粗悪なワクチンや偽造ワクチン、無効な液体を「薬」として売り出す者も現れたのです。
「薬」という言葉が人々の信仰や希望と直結していたからこそ、その期待を裏切る行為は社会に深刻な混乱をもたらしました。
かつて「薬」は、限られた人間しか扱えない特殊な技能でした。
それが産業革命を経て、解熱鎮痛剤や抗生物質の登場とともに“万人のためのもの”となり「見かけからは成分がわからない」と気が付いた人が現れて以来人は薬を「信じるだけ」では済まされなくなったのです。
薬が特権から大衆へと広がったとき、必要になったのは「信頼」でした。
それは国にゆだねられ、人が人を欺くことを防ぐために、薬を「つくる側」を縛る法律が生まれました。
それがGMPという「信頼の枠組み」の始まりです。
それは決して、製薬企業の自由を奪うものではありません。
社会に対する「信頼の約束」を、制度として明文化したものです。
本連載では、この「信頼の枠組み」がいかにして形づくられてきたか――
人類と薬の歴史の中で、GMPという考え方がどのように芽生え、制度として根付いていったのかをたどっていきます。
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本内容は、製薬・医療関係者向けに講義形式でもご提供可能です。
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